「個性の尊重」を論述するヒント
たくさんの思いをあなたが思いつく限り書き出してみましょう。その中から取捨選択して小論文の中に取り込めばいいのです。選択肢は多い方が論述がスムーズに進むはずです。
例えば、親に比較された経験からあなたはどんな気持ちでしたか。親はどういうつもりで比較してしまうのでしょうか。親はあなたに発奮してもらいたくてできのいいAさんを引き合いにだしたのかもしれません。
それを不快に思ったのなら、このとき親はどういう声かけをすればよかったと思いますか。比較されたという事実(経験)よりも、そこからあなたがどう思ったか、相手の気持ちの中に見えるものは何かなど、経験から得たもの、あなたが考えた事柄が重要なのです。それをアウトラインとして順番に書き出すのです。
比較の場合、多くは優劣をつけることになりますね。ある点において、一方を高く評価し他方を低く見るという点で平等ではないと言いたいですね。あなたは、比較され、不愉快だったり落ち込んだりした経験はありませんか。ただ、その間に浮かんだ様々な思いをアウトラインに出し切っていないと、説得力ある材料が不足し、読み手にはつながりが理解しにくくなります。
個性というのはその人独特の性質というか、良い点も悪い点も含むものです。それを良い点のみに絞って個性と捉えてはいけません。例えば、個性は「ほめる」と言うより「認める」ということになりませんか。良いも悪いもひっくるめて全人格的に存在の尊さを認めてやる。それこそ比較の優劣で判断されず、その人自身の中で良い点をどう伸ばし、悪い点をどう改善していくかを考えていけば個性の尊重になるのではないですか。
比較するのは人間の本能かも知れません。現代の様々な社会悪もこれに端を発していることが多々あります。「比べない」と言うのは易しいことですが、実行となると大変そうです。「人は違って当たり前」というスタートラインにつくためにも、常に考えておく必要がありそうです。この点について、あなたの中で自分のオリジナルの意見をまとめておくのがポイントです。
あなたが考える「個性」とは
「個性」とは何でしょう。たとえば、もしも個性とは社会を生き抜くための能力であり、他者より秀でた才能を持つことが出来ない人間は個性もなく、規律と統制の中で平均点を高めることに存在価値を見つけ出すしかないという主張では、少々主観的な捉え方となってしまいます。はたして「個性」=「優れた才能」でしょうか?
せっかく得ることのできたあなた独自の意見は、読み手にきちんと理解してもらえるように小論文を書くことも大切なことです。
ではどうすれば読み手を説得できるでしょう。そのためにはまず、あなたが結論に至った考察を分析メモにも書いてみてください。例えば、有名なサッカープレーヤーになるための個性は「強烈な個性」です。「他人より抜きん出た才能」とも言えるものですね。しかし周囲の人は強烈な個性の持ち主ばかりではないために、そのことが際立っているのです。では強烈ではない個性は尊重されなくとも良いのでしょうか? もちろんそうではありませんね。
大多数の人達は「飛び抜けた才能や個性をもっていない」のです。その人達の個性がないがしろにされることに賛成する人はいないでしょう。なぜだと思いますか? あるいは逆に「強烈な個性」以外の個性を認めない社会はどのようなものになるでしょうね。没個性化という言葉がありますが、この言葉が意味する人間社会は理想的でしょうか?
個性を尊重することの意義は
ところで、規律や統制を守ることはもちろん大切なことです。つまり「規律や統制を守ること」に問題点があるのではなく、そのことのみに捉われていることが、強烈な個性を育てるチャンスを逃しているのではないでしょうか?
一方、「規律や統制を守ること」ができない強烈な個性の持ち主は、果たして社会に本当に受け入れられているのでしょうか? 社会が受け入れるのは、才能というその人の一部分の個性であって、その人自身ではないかもしれません。どんなに強烈な個性をもっていようとも、やはり社会の一員なのですから「規律や統制を守ること」は必要なのではないでしょうか?
特に日本社会は、協調性を尊び、他人と同一化することで人間関係を円滑に保つという心理が深く浸透しており、集団社会のルールや道徳観、善悪の判断などは、このような規律と統制があるからこそ守られているとも言えますね。
「個性を尊重することの意義について」考えを述べるように指示されていれば、たとえば高水準の日本の学校教育において、規律や統制を守りながら「私」という存在の「個性」を尊重していくためには、どのような意識を持つべきなのかを、もう一段階深く考察する必要があるとおもいます。そうすれば、より設問意図に沿った論展開になるのではないでしょうか。
また、人の個性はもちろん尊重されなければなりませんが、それは一方通行の尊重ではなく、相手の個性をも認めて尊重することが重要なのではないでしょうか? あなたが出した結論を大事にするためにも、自分の考え方、考察の方向を客観的に見直す視点を必ず持つようにしましょう。そして、自分でも納得できるようなら、その背景や理由を読み手にわかりやすく説明してみてください。
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