アジアの中の日本
まずは、設問意図をしっかりと把握することから始めましょう。何について考えさせようとしているのか、そこにどんな問題点があって、どんなことを論点に持ってくると良いのか、と課題文から深く読み取ることが、とても重要ですね。
アジアの中の日本という考え方は、私達日本人の中にどれほど浸透しているでしょうか。日本人にとって「アジア」は1つの国のように捉えられ、日本とは異質のものと捉えられているのかもしれません。アジアは、エキゾチックで謎めいている国(地域)だと思われています。アジアの中の日本の位置づけを日本の都道府県に置き換えて考えてみるというアイデアもあります。
アジアを1つの地域として捉えるならば、日本の都道府県に置き換えられるかもしれませんが、日本の中にあっても様々な風習や習慣、方言、顔つきなど、それぞれ個性豊かです。 アジアと呼ばれる地域は26ヶ国あり、それは3つの地理的グループに分けられます。
東アジアの8ヶ国・地域(中国、日本、南北朝鮮、モンゴル、台湾、香港、マカオ)、東南アジア10ヶ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ビルマ)、南アジア 8ヶ国(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ、アフガニスタン)です。こうして見てみると、そこには言葉、肌の色、宗教、習慣は、実に様々で、単に肌の色で黄色人種の住んでいる地域がアジアかといえば、そうではありませんね。言葉、宗教に至っては、共通点を見出すことが難しいでしょう。
では、日本がアジアの一員であると誰もが認識できるようになるには、何を基準に置けばいいでしょう? 単に地理的要因だけ、また内面的なつながりだけに止まらず、日本人の私達の物の見方、考え方そのものが、アジアを別の何か自分たちとは違う遠いものに位置づけしてしまっているのかもしれません。
日本人である自分がアジアという1つの地域を考えた時、あなたは、アジアについてどんな思いを抱くでしょうか?そこで、「アジアの一員である自覚が希薄」という考え方を、もう少し深く掘り下げて分析してみましょう。歴史的背景から日本人の心理分析を行なってみると、日本は近代化を実現して経済発展を成功させた世界有数の大国であり、欧米諸国と肩を並べられるほどの先進国として、他のアジア諸国より抜きん出ていますね。
そしてアジア諸国全体の主導権を握っているという優越感からくる「別格意識」が、日本人意識の根底にあるのではないかと推察できることが分かると思います。あなたは、なぜ日本人がそのような意識を持つようになったのだと考えますか?
日本はアジアの一員
日本は明治の頃より「脱亜入欧」(福沢諭吉)のスローガンを掲げて西欧文化の輸入に努めるとともに、封建的な古い制度や因襲を「アジア的」として排除にも努めてきましたね。
その意識の裏には、西欧崇拝主義が根強くあり、世界有数の先進国でありながら、現代でもそのような心理的影響を受けていることが様々見受けられると思います。あなたの身の回りにも当てはまるような場面がないか、注意深く観察してみてください。
そのような背景から、「日本はアジアの一員である」と言われることに、少なからず抵抗感を覚えてしまう意識が生まれてくることと、あなたが考える「内面的なつながりがない」という考え方とをどのように関連させて説明できるかを、もう少し考えてみてはいかがでしょう。
そこからさらに発展させて、これからの世界情勢の流れの中で、日本がアジアの一員としての意識をもつ必要性はどれくらいあるのだろうか、また次第に勢力を伸ばしつつあるアジア勢力の中で、日本の立場はどのように変化していくのだろうか、などと考えてみてください。そうすると、日本とアジアの関係がどうあるべきかが見えてくるのではないでしょうか。
日本人側の警戒心
日本人側の「警戒心」について考察を深めましょう。同じアジア人であっても、文化や風習などに違いがあれば、まるで異なる文化圏に属する人々、といった印象を日本人は抱きますね。だからといって区別をするのは「おかしな話」だ、という指摘はもっともだと思います。さらに、お互いの関係作りを妨げているのは、「警戒心」ではないかと考えられます。
そこで、そこから一歩考察を進め、「では、この警戒心を取り払うには、いったいどうすればいいのか」と、自問自答することによって、より視野を広げることができたのではないでしょうか。
そもそも、日本人が抱く「警戒心」とは、相手がアジア人だから生じるものなのでしょうか。それは、日本人が一般に外国人に対して抱く「警戒心」ではないか、とも考えられますね。島国に生きる日本人は、いってみれば、クラスの中は仲がいいけれど、別のクラスの同級生とはあまり付き合いがない、といった状況に置かれているように思います。クラスという枠組みをこえて友達を作るには、何らかのきっかけや努力が必要となりますね。それと同じ種類の努力が、日本と諸外国、中でもアジア諸国との間に必要とされているのではないでしょうか。
また、アジア諸国との隔たりには、お互いの社会の経済格差もわざわいしているように思われます。自分の家に比べ、10分の1の収入で生活しているクラスメートがいるとしたら、あなたは、そうした格差を意識せずに付き合っていくことができますか。私たち日本人は、無意識のうちに、アジア諸国を後進国のように考え、自分たちと区別をしているのではないでしょうか。
このように、まず、自分自身が抱いている「警戒心」について考察することで、アジアにおける日本の位置づけについて、また新しい視点から認識できるかもしれませんね。
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