小論文と志望理由書の添削

答案の向こう側

 そんななかで、志望理由書の添削をしたときに、名前と志望先が書かれただけであとは白紙の解答用紙に出会ったことがあります。しかし、白紙だからと何もコメントせずに返却するわけにはいきません。なぜ白紙なんだろう、と考えてみました。提出期限を忘れていたのかしら、それとも体調を崩して書けなかったのかしら。志望理由について考えがまとまらなかったのか、それともただ書くのが面倒だっただけなのか、はたまた自分の希望とは違う志望先を選ばなければならなくて心の葛藤があるのか・・・ドラマが書けそうなぐらい様々な想像をしてみました。結局、普段の添削ならば20分もあればこなせるものを、この回答には1時間近くかかってしまったことを覚えています。

 

 添削での文章指導では、書いた相手の顔が見えません。もちろん、相手を知っているわけではありませんから、どんなことを考えている人なのかもわからないわけです。それだけに、文章はその人の人物像や人柄を想像させてくれます。

 

 個人的には、志望理由書や自己推薦書を読ませていただくのはとても楽しくて好きな作業です。将来の希望に満ち溢れてとても意欲的な文章に出会うと、この人は将来どんな仕事に就くのだろうか、きっと自分の希望をかなえるに違いないと、こちらまでワクワクしてしまいます。

 

 小論文の添削の仕事は、自宅で夜中に黙々と文章を読みコメントするという地味な作業です。しかし、これがひとりの人の将来を決める重大な分岐点に関わっていると思うと、責任の重さも感じますが、とてもありがたい仕事であるとつくづく感じます。

 

著者 ひねもす

 

 

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価値ある情報を伝える
小論文は価値ある情報を他人に伝えることにその役割があります。特に入試小論文において価値ある情報を伝える相手は当然出題者です。
分析作業はメモ書き
小論文を書く際に必要な作業は分析作業です。分析作業を効率よく行うコツはメモを取ることなのです。
情報の文章化
小論文を論述するとは簡単に言えば、価値ある有益な情報を発見し、それを文章化する作業です。
コミュニケーション能力
小論文を書くことはそれを読む相手がいるということは当然なのですが、それを意識していない論述に出会う場合があります。小論文を作成することは他者とのコミュニケーションを図ることです。
あなたの意見
小論文に論述する内容はあなたの意見や主張です。あなたの考えは、他の人といつも同じではないはず。小論文もその中身は論じる人によりその内容は異なるものです。
文字を書く注意点
パソコンのキーボード入力が普及した現在でも入試小論文は手書きで仕上げます。あなたの書き綴る文字は読み手にとって読みやすい文字でしょうか。
好印象を与える条件
小論文や志望理由書などあなたが書き綴った文章を読み手に好印象を持ってもらうための秘訣は簡単なことです。
Because(ビコーズ)
小論文は価値のある情報を他者に伝えるための文章です。伝えるためには相手が分かりやすく理解しやすい手段を考える必要があります。ではどうすれば、分かりやすく情報を伝えることが可能になるのでしょうか。
文章のTPO
自分の意見を述べるときに、受けとる相手がどんな意見を持っているかということにまで考えが及ばないことが多くあります。
推薦入試の現状
最近ますます人気の度合いが高まっているのが推薦入試とAO入試です。その対策で欠かせないのが志望理由書と小論文です。
AO入試の現状
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小論文の添削
小論文の添削の作業をしていると、さまざまな答案に出会います。みなさんテーマについてそれぞれ意見を持って、まさに知恵を絞って書かれたものばかりです。消しゴムのあとも生々しく残ったものもあり、伝えようとする努力のあとが伺えます。
小論文に正解がある?
小論文の講師をはじめて間もないころ模擬回答のようなものがあったほうがいいのではないかという思いから、毎回生徒さんと同じ立場で課題に対しての論文を書いてから授業に臨んでいました。しばらくそのスタイルを続けていたのですが、これがあまり意味のないことではないか思うようになったのです。
知識の引き出し
論文の指導をしていると、学生から思わぬ質問を受けることがあります。課題へのアプローチの仕方や論述の組立てかたなど、論文の書き方だけでなく、課題文やその背景にある問題についての質問を受けることも少なくありません。
語彙のまちがい
小論文や提出文書を書くときに注意したいことに語彙のまちがいがあります。たとえば特に高校生などに多くみられる会話表現を使用していることにおいては、何が会話表現なのかがわかっていないことが多いのではないでしょうか。
言葉や表現の変化
「全然」という言葉は、「全然〜ない」のように、否定の言葉で受けるものですが、「全然大丈夫です」などと使われるようになってきています。これは会話表現で使われている言葉が、一般的な言葉として徐々に市民権を得てきていると考えてもよいでしょう。
制限時間
問題についやす時間が制限時間に比べて短いと感じるときがあります。時間が短いと感じるのはそれだけよく考えようと真摯に取り組んでいるのです。
言葉とは
言葉はどんな場面で、どのような使われ方をしているでしょうか。言葉は伝達の手段としてだけではなく、物事を考えたり、人とコミュニケーションをとったりするときにも使われます。