答案の向こう側
そんななかで、志望理由書の添削をしたときに、名前と志望先が書かれただけであとは白紙の解答用紙に出会ったことがあります。しかし、白紙だからと何もコメントせずに返却するわけにはいきません。なぜ白紙なんだろう、と考えてみました。提出期限を忘れていたのかしら、それとも体調を崩して書けなかったのかしら。志望理由について考えがまとまらなかったのか、それともただ書くのが面倒だっただけなのか、はたまた自分の希望とは違う志望先を選ばなければならなくて心の葛藤があるのか・・・ドラマが書けそうなぐらい様々な想像をしてみました。結局、普段の添削ならば20分もあればこなせるものを、この回答には1時間近くかかってしまったことを覚えています。
添削での文章指導では、書いた相手の顔が見えません。もちろん、相手を知っているわけではありませんから、どんなことを考えている人なのかもわからないわけです。それだけに、文章はその人の人物像や人柄を想像させてくれます。
個人的には、志望理由書や自己推薦書を読ませていただくのはとても楽しくて好きな作業です。将来の希望に満ち溢れてとても意欲的な文章に出会うと、この人は将来どんな仕事に就くのだろうか、きっと自分の希望をかなえるに違いないと、こちらまでワクワクしてしまいます。
小論文の添削の仕事は、自宅で夜中に黙々と文章を読みコメントするという地味な作業です。しかし、これがひとりの人の将来を決める重大な分岐点に関わっていると思うと、責任の重さも感じますが、とてもありがたい仕事であるとつくづく感じます。
著者 ひねもす
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