小論文の書き方と模擬回答

意見はみんな違っていい

 たしかに、課題のテーマに関して考えるべきポイントや抑えておきたい話題などは明確になりました。しかし、自分がいくら考えて書いたものでも、生徒さんが書いてきたものはまったく別の論文なのです。そして、生徒さんが書いた論文にコメントしようとすると、どうしても自分と意見の違うところや方向性が違うところが目に付いてしまい、本来指摘しなければならないはずの部分がみえてこなくなってしまいました。

 

 理由は簡単なことです。生徒さんは自分とは違った意見をもっているので、模擬回答などは作ってもしかたなかったのです。それどころか、なまじ模擬回答を作ってしまったために相手の意見について素直に理解できなくなっていたのです。まさに自分の意見を押し付けてしまっていました。 

 

 小論文では模擬回答を作るのは非常に難しいことだと思います。考え方の方向性や論述の方法などは模擬回答にすることはできるかもしれませんが、論点はそれぞれ意見が違っていて、数学のように答えが1つとならないからです。

 

 この経験から学んだことは、生徒さんも自分も、自分の意見を相手に伝えるために論文を書くということに関しては、立場は同じであるということです。課題とされたテーマについてはそれぞれ意見を持っていて、自分なりの形にしようとしています。指導者としてやるべきことは、生徒さんがもっている考え方を、どう書いたら読み手に伝わりやすくなるか、その手段を伝えることなのだと実感しました。

 

著者 ひねもす

 

 

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言葉はどんな場面で、どのような使われ方をしているでしょうか。言葉は伝達の手段としてだけではなく、物事を考えたり、人とコミュニケーションをとったりするときにも使われます。