考え方と着眼点を変える
多くの方は「所得格差の拡大」という事実についての背景を分析されます。前記の話で言えば①と③です。具体的に「雇用形態の変化における非正規労働者の増加拡大」などがあげられ、どうしてこのような現状になってしまったのかを考えていくことができます。これは実際に起こっていることを知らなければ意見を出すことは難しいかもしれません。
しかし、課題の主旨(②)は「格差社会の拡大の背景」を考えることです。ここに主眼をおくと「格差とは何か」「どうして格差が生まれるのか」をについて意見を出すことができます。
たとえば、格差とは「所得、情報、知識などを、持つものと持たないものの差」であると考えたとしましょう。ではそこにどのような問題があるのでしょうか？「持つものを『優』、持たないものを『劣』とする社会通念」があり、そのような社会を生み出す背景となっているのは、勝ち組・負け組といった言葉で象徴されるような競争社会で、いわゆる負け組となった人たちが夢や勇気や元気を持てなくなっていることが問題である、といった意見もでてきます。
実際に論文を作成するにあたっては、現状における問題点の分析と、主題として提示されている課題についての意見の両方をふまえて、自分の意見を述べていくこととなりますが、課題について知っておいてほしい現状などは、課題文から読み取れることが多いのです。大切なのは、その事実から自分はどのような意見を導き出すのかということなのです。
このように考えると、小論文は「知らないと書けない」のではなくて、「考え方と着眼点を変えていけば、きっと書ける」のです。むしろ、そのアプローチこそ、大学入試小論文の最大の目的である「あなたはどういう考え方や着眼点をもった人なのか、論述を通して教えて欲しい」というところに応じることになるのです。
著者 ひねもす
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